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Beelink SER5 - Ryzen 5 5600H/DDR4 8*2GB/NVMe SSD 512GB

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Intel が第10世代以前の内蔵 GPU をレガシー扱いにしてしまったため、ミニ PC は軒並みその対象になってしまいました。ミニ PC なので、そんなにゲームがしたいわけでもないのですが、なんか業腹なので AMD でミニ PC を物色していたところ、第5世代で、かつ、お手頃なお値段になっていたのがこのモデルです。Beelink 社は 【西川和久の不定期コラム】NUCサイズにRyzen 7、メモリ32GB、ストレージ512GBを詰め込んだミニPC「Beelink SER4」 - PC Watch など、ギーク向けプロモーションを展開している会社です。CPU 換装はできませんが、メモリは 64GB まで増設でき、M.2 2280 NVMe、2.5 インチのストレージを換装・増設できます。

製品諸元

製品仕様


www.youtube.com

Features Specifications
Processor AMD Ryzen™ 5 5600H | AMD
Chipset Ryzen SOC / FCH
GPU AMD Radeon Graphics (Vega 7)
Memory 2x SO-DIMM Slots up to 64GB - 2x Crucial DDR4-3200 8GB
Storage 1x M.2 2280 NVMe SSD (PCIe 3.0 x 4) Slot up to 2TB - Kingstone SNVS500G 512GB
Storage Expansion 1x 2.5 inch 7mm SATA SSD/HDD Slot
TPM 2.0 (AMD PSP 10.0)
Wireless Connectivity 1x M.2 2230 WIFI Slot - MediaTek RZ608 WiFi 6E (80MHz supported), Bluetooth 5.2
Video Output HDMI(4K@60Hz) , ② HDMI(4K@--Hz) , ③ USB-C
Audio Output HDMI , Realtek ALC269 HD Audio (1x 3.5mm Audio Jack - Front Headphone OUT)
Peripherals Interface (Front) 1x USB 3.1 Type-C Port, 2x USB 3.0 Type-A Port
(Back) 1x RJ45 Realtek Gigabit Ethernet Port, 1x USB 3.0 Type-A Port, 1x USB 2.0 Type-A Port
Power DC 19V/3A 57W (adapter included)
System Microsoft Windows 11 Professional, Microsoft Windows 10 Professional
Launch Date Jul ’22
Product Dimension 126 × 113 × 42mm
Package Dimension 213 × 136 × 58mm
Net Weight -- kg
Gross Weight 1.03 kg

Beelink 公式の情報が少ないため現物で確認した情報も含みます。また、AMD 社は Intel 社 に比べて公開情報が少なくて詳しいことを調べるのが一苦労でした。

SER5 開封短評

パッケージは大変コンパクトでDVD ボックスの様な箱で届きます。重量も想像よりもかなり軽いです。スリーブつきの箱はすり合わせもよくできています。少し厚めのボール紙製の箱です。本体とアクセサリーボックスは緩衝材もなくきっちり収められています。パソコンというよりはタブレットスマホの梱包に近い感覚です。本体のパッケージもスマホ的です。コンピュータの梱包、と考えるといささか不安を覚えましたが、本体も軽く、そう壊れるものでもないのかもしれません。

同梱物は、マニュアル、AC アダプタ、HDMI ケーブル 2本、VESA マウントブラケット、ネジセット。

AC アダプタは 19V 3A (外径:5.5φ・内径:2.5φ・センタープラス・PSE不明*1 )、コンセントに直接さすタイプです。

筐体は金属のようです。上面・左右側面は細かいメッシュになっています。左右両側面のメッシュは、上面の CPU とメモリ・ストレージの双方のエアフローを確保するようになっています。作りに安っぽさはありません。

SER 5600H 本体分解短評

メモリソケット・M.2 2280 スロット・2.5' ベイは、すべてマザーボードの下に用意されていて、底面板を外してアクセスします。底面板をはずせばいいだけなので、メンテナンス性はよいと思いきやなかなか難物でした。

筐体の分解は No.1 + ドライバとペンチを使用します。ペンチの代わりに VESA ブラケットでも開けれるかもしれませんが、かなり強い力が必要なので、ブラケットが歪んでしまう可能性があります。

まず、底面板を止める4か所のネジを外します。ネジはかなりきつく締められています。基本に忠実に+ドライバをしっかり押し付けて回します。回転だけで緩めようとすると、舐めてしまうので注意してください。ネジを外しても底面板は外れません。ケースや底面板の工作精度がよいため、指のひっかかりがまったくありませんし、かなりかっちりはまっていること、ゴムで張り付いていることなどから、外れる気配が全くありません。

次に、添付のネジセットの中から、銀色で頭が平らのミリネジを 2 本とりだし、底面板に取り付けます。ペンチで引っ張るためのとっかかりにするためです。ネジを取り付けたら、ペンチで底面板を左右少しずつ引っ張ります。初回の分解はかなり渋いです。

底面板は、SATA 用フラットケーブルでマザーボードと接続しているため、気を付けてとりはずしてください。

2.5' ベイのヒートシンクもまた、精度良く作られていて固定が強く、無理に外そうとするとヒートシンクが折れ曲がってしまいそうだったため、外せませんでした。

組み立ては逆手順です。

NVMe SSD と 2.5' ペイの間にあるゴム*2SATA 用フラットケーブルをうまく挟み込むように注意します。

SER5 ファースト・インプレッション

大きさ・重量感は Intel NUC よりは一回り大きく、ACEPC GK3V と同じくらいで奥行きが少し短い程度です。

前面は電源ボタン、CMOS リセット穴、USB 3.0 Type-A x 2, Type-C x 1、ヘッドフォンジャック。背面に HDMI x 2、USB TYpe-A 3.0 x 1, 2.0 x 1 です。種類も数も少なめで、筐体のコンパクトさと引き換えにかなり割り切った印象です。

UEFI は AMI クラシック。リファレンスをカスタマイズしていないのか、設定項目の数が自作市場のマザーボードでも見たことがないくらい多いです。中には本機では意味がなさそうな項目もあります。

CPU は Ryzen 5 5600H で、Zen 3 コアアーキテクチャの TDP 45W ミッドレンジラップトップ向けのプロセッサという位置づけです。第5世代 Ryzen APU は、ミニ PC ではまだあまり選択肢がありません。

PCIe にぶら下がっている有線 LAN は Realtek、HD オーディオコントローラは Realtek、無線 LAN は MediaTek RZ608。USB にぶら下がってる Bluetooth は無線 LAN と同じく RZ608 でした。なお、RZ608 を含む SER5600H について、本体に技術基準適合証明の表示はありません。

OS のプリインストールは Microsoft Windows 11 Pro バージョン 21H2 です。Windows 10 Professional は、リカバリイメージをサポートからダウンロードし、インストール手順に従いインストールできます。同様にバージョン 21H2 でした。インストール直後はプレーンな構成で、ベンダーのカスタマイズはほぼありません*3。ドライバキットも、グラフィックドライバー*4、ALC269 オーディオドライバーと HSA、LAN、WiFi、Blutooth と ETU813 指紋認証ドライバと、最後だけはよくわかりませんが、おおよそ最低限の内容です。

タスクトレイの AMD Link アプリはストアアプリで、グラフィックドライバーとは無関係にバージョンアップされてしまいます。起動しない場合は、AMD 公式からグラフィックドライバーをインストールしなおすとよいでしょう。

初回起動時、物理キーボードのレイアウトが英語 101/102 キーボードです。設定の地域と言語にある、日本語のオプションで日本語 106/109 キーボードに変更してください。その設定を終わるまでは、パスワードなど大事なところで記号を入力することを避けるようにするとよいでしょう。インストール時の Microsoft アカウントでのサインイン設定を回避するには、ネットワークに接続しないようにします。

CPU の排熱は、上方吸気・後方上段排気です。ミニ PC で起こりがちな熱のこもりが少ないことは本機の美点です。ただし、排気は後方やや下向きに吹き付けるらしく、HDMI や USB など背面コネクタに挿入されているケーブル・機器類は熱を持ちがちです。また、底面は 2.5' HDD/SSD と NVMe SSD の熱でほんのり暖かくなります。上面に物を載せない、左右両側面と背面をふさがない、加熱されて困るものを背面に挿さない、下にファブリックを敷かないなどの注意は必要でしょう。

アイドル時 CPU は外気温 + 20℃、M.2 2280 が +8℃、2.5 インチドライブが +10℃、FFXIVベンチ終了時で + 47℃・+ 10℃・+10℃と、ドライブ類の温度上昇がほぼなく、筐体に余裕のあるデスクトップ PC 並です。Windows Defender のフルスキャン中にコア温度が 90℃を超えていても、NVMe SSD は 60℃を下回っていて安定感があります。アグレッシブな温度制御をするラップトップ用の CPU であることや筐体が金属で大部分がメッシュであることなどが効いているようです。SSD の動作温度をひやひやしながら見なくてもよい、というのは気分的にかなり楽です。

初期構成 (2022/8)

COVID-19 での半導体関連のひっ迫と円安で、全体的にパーツの値段は高めでした。

メモリは、そもそも DDR4-3200 32GB SO-DIMM モジュールの選択肢が少ないです。もともと Crucial by Micron のモジュールを実装されていることもあり、無理をすることもなかったのですが、やはり 16GB では少し心もとなかったので増設することにしました。

ストレージは、商戦期を過ぎて安い 1TB NVMe SSD が払底しているためか、即納では選択肢がありませんでした。Western Digital WDS100T3X0E-EC はゲーム用ということなのか動作温度の上限が 70 ℃となっていて安心感があります。

AC アダプターは、PSE マークがあるものをあらためて調達しました。19V 3A ・外径:5.5φ・内径:2.5φ・センタープラスであればよいので、今回は2013 年以前の NEC パソコンに対応した国内メーカーの 互換 AC アダプタを利用しました。インターネットで仕様を眺めている限り、東芝富士通の互換 AC アダプタも利用できそうでした。

Parts Upgrade Vendor Parts No Price
Base Unit Beelink SER5600H ¥ 69,800.-
Memory 16GB → 64GB TRANSCEND JM3200HSE-32G ¥ 35,600.-
M.2 2280 SSD 512GB → 1TB Western Digital WDS100T3X0E-EC ¥ 14,764.-
AC adapter PSE Elecom ACDC-1965NEBK ¥ 3,570.-
合計 ¥123,734.-

高パフォーマンス (2023/07)

電源プロファイルを高パフォーマンスに設定して、高い負荷をかけ、CPU 温度が 90℃ を越えるとディスプレイが切断されたりします。冷却がおいつかないようです。電源プロファイルは、バランス、または、省電力で使用するのがよいようです。

*1:日本向けは、TDX-1903000"J" とのことです。TDX-1903000"U" は米国向けです。

*2:熱伝導ゴムではないかと思います。

*3:リカバリファイルのアーカイブファイル名から推測するに、およそインストール時のネットワーク接続をサポートするため RZ608 のドライバを追加したものでしょう。

*4:Radeon Software は 21.10.2 で、これはさすがに古くなっています。