ら・び・あん・ろ~ず

ちょっと古い IT やらガジェットやらのよもやまごとをつぶやきます。

I-O DATA EX-LD4K321VB

I-O DATA 製のエコノミークラスの 31.5インチ 4K モニターです。Amazon など特定の EC サイト専売商品です。

製品短評

前置き

4K モニタは、いつかほしいと思いつつもこれまで避けてきました。理由は主に発色です。

40インチ未満の 4K モニターには、IPS パネルとVA パネルを採用した製品があります。その IPS パネルは一昔前のもののように赤被りする*1のです。最近のフル HD のパネルは、値段が安くても発色が良好なものがほとんどです。4K パネルはプレミア価格なのに発色がイマイチ、というのはいただけません。

フル HD パネルの発色が良くなったのは、テレビに採用されたことによる量産効果なのではなかろうか*2、と考えています。それに引き換え、40インチ未満で 4K パネルを採用したテレビ、というのはあまり見かけません。大量生産されないので技術的にこなれない、または、大量に作らないのでキャパシティの余っている古い生産ラインで作るので相対的にパネル品質が低くなる、というニッチな市場特有の悪循環なのではないか、という疑念がくすぶっていました。

今回、購入に至ったのは、テレワークでの画面の狭さにほとほと困り果てたこと、HDR 対応のゲーム機が届いたこと、発色があまりよくないと考えられる IPS パネルではなかったこと、セールで4万円を切っていたことなどいくつかの事情が重なった結果です。入力インターフェースが、置換え前の ASUS VX279H の HDMI × 2, VGA と比べて、HDMI × 3, DisplayPort, VGA とかなり豊富だったのも、後押しをしました。

サイズ感

購入後、しばらく使ってみての感想です。まず、31.5インチというサイズ感について。

27インチ液晶の置換えで多少、設置場所は広く取るようになりましたが、それ以上に画面が大きくなったな、と感じます。それだけで満足感があります。

ただ、スケーリングを 100% で使うのであれば 3K が限界*3でした。4K ネイティブでは、老眼が進んだ身には文字が小さくなりすぎます。

大きくなったといっても、スタンドは中央部分だけです。そのため、机の端でも設置できるのは利点です。40インチ以上になると、左右二か所に細い足がつくタイプのスタンドに変わってしまい、設置性がかなり変わってしまいます。

パネル

次に、パネルの発色について。
一言では言いづらいのですが、リニアではないパネル特性を色調補正でねじ伏せている様に感じます。いままで使ってきた液晶ディスプレイであまり感じたことのない違和感のある絵作りです。

https://www.iodata.jp/image/ex-ld4k321vb_06.jpg

HDMI1 から HDR 映像を入力すると、色調補正機能がすべてオフになります。すると、Youtube のアイコンが蛍光ピンクかと思うような浅くド派手な色調になりました。緑についても同じ傾向です。入力機器の設定で HDR をやめるとかなり露骨に色調が変化することからも、パネルのピーキーさの一端がうかがいしれます。なお、HDMI1 以外の DisplayPort やその他のポートは HDR に対応していません*4。ですが、前述の通り、到底実用とは思えない絵作りですので、それでよいかと思います。

HDR ではない映像についても、ASUS VX279H や MITSUBISHI RDT272WX に比べて全体的にかなり明るく白っぽく見える絵作りです。明るさを 0 にしてもまだ白っぽく感じます。そのため、パソコンやゲームではいまひとつ暗部が落とし切れていません*5。いくらバックライトコントロールCREX があるといっても、明るさ 0 でもなお明るい黒をなんとかできるわけではないようです。

それにしても、安価な STN パネルや TN パネルとは異なり、視野角も階調表現もそれなりにあるだけに、何が悪い、と、こう一言では言いづらい発色です。VA パネルは EIZO HD2441W で見慣れたと思っていただけに、なかなか判断に困ります。単体で Youtube の人物や料理動画を表示している分には自然に見えますので、動画やデジタルサイネージなどの用途向けなのかもしれません。屋外のデジタルサイネージで 300cd/㎡ は少し暗いかもしれませんが。

操作系

設定は、ありがちな(背面にあって手探りでは使いにくい)物理ボタンや(指が乾いていると反応してくれない)静電容量式タッチボタンではなく、クリック付きのスティック(I-O Data の表記では JoyStick)、という珍しい方式を採用しています。メニュー構造と相まって、背面にあるにもかかわらず、大変、良い操作感です。これは、EIZO, DELL, NEC, ASUS など過去さまざまに辛酸をなめてきた身からすると、手放しでほめられる美点です。これなら、旧 MITSUBISHI や I-O Data GigaCrysta シリーズのようなリモコンがなくても許せます。

総評

総合的にみるとお買い得ではありました。とはいえ、手放しにお買い得だったとは言いづらく、パネルの実力は現物で 4K HDR の出力をみないことにはわからない、など、いくつかの教訓を残す結果となりました。
現物を見て、と言ってみたものの、家電量販店のディスプレイ売り場は一時期に比べてかなり縮小されていますし、そもそも 27インチ以上の設置台数は大型店でも片手で数えられるほどですけどね……。ニッチな製品は、あきらめも肝心です……。

*1:IPS パネルには黄被りするものもありましたね。iPhone 5SNintendo DS シリーズなどで採用されていて、その黄色さ故に、当時、なかなか酷い蔑称を界隈からいただいていました。

*2:当初、ワイドな PC のディスプレイの解像度は WUXGA 1920 x 1200 のような 16:10 だったのに、瞬く間に HD 1366×768 や Full HD 1920 x 1080 の 16:9 へと塗り替わったように感じています。そのパネル、どう考えてもテレビ用ですよね……。

*3:Windows 10 ではマルチモニタを異なるスケーリングで設定していると、古いアプリケーションで不都合がでることがあります。また、そうでなくてもモニタ間でアプリケーションを移動した時にスケーリングが切り替わるさまが、いまひとつ気持ちの良いものではありません。

*4:HDR10、HDCP 2.2 は HDMI1 のみ。4K 60Hz、10ビットカラーは HDMI1 と DisplayPort のみ。

*5:Nintendo Switch のスタート画面の背景はしまりのないグレーになります。あつまれ どうぶつの森をプレイしていると、夜なのに、昼間のようにはっきり見えます。便利なのですけど風情はないです。